No.970118

チートでチートな三国志・そして恋姫†無双

第5章 “貞観の治


ただいま

2018-10-12 21:21:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1783   閲覧ユーザー数:1623

 

第67話 見据えるのは100年先の未来

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜツバメの巣のいわゆる“スープ”があって鮑のステーキ的なものがあってフカヒレはないのだろうか……。と考えながら桜鶴梅での昼飯は終わった。財布は3分の1ほどまで軽くなってしまったけど、美味かったからいいだろう。あんまりおいしいもの食べるのに興味ある仲間って思いつく限り誰もいないけど、どうしてなんだろうな。黎明館の学食が美味かったし、親から誕生日などの記念日には美味しいレストランに連れて行ってもらったりしたから、俺自身食べるのはすごく好きなのだけれど。

 

 

「さて、あんま楽しくない話だけど執務室に戻ってからしようか。」

 

「承知しました。」

 

愛紗にしばらく外出してもらうように頼み、部屋には俺と鴻鵠のみ。といっても質問の内容はだいたい予想がつくんだよなあ……。子供の頃の俺が全く理解できず、祖父が笑っているのを一人で怒って、警察はとんでもない組織だと思っていたこととおそらく大差ないのだろう。

 

今なら、警察官の発砲がそれだけでニュースになる理由も、警官が死にかけたり1人死んだりする“程度”で発砲するのを祖父が嫌っている理由もよくわかっているから、それをいかに丁寧に説明するか、それだけだ。

 

 

 

「一刀殿は警察という組織を3つの部門に分けました。警邏、特捜、査察。特捜の任務に関しては特に疑問に思うことはありません。該当品目に阿片が増えた程度のことですから。

 

しかし、警邏と査察に関しては正直に言って理解できないことだらけです。

 

それについて、考案したのは一刀殿だと伺っていたのでどうしても聞いておかなくてはならないと思っていました。

 

まず警邏から伺わせていただきます。

 

犯罪者を生かして捕らえる、これは理解できますが、そのときに剣なり槍なり、武具をを基本的に使っていけない、というのはなぜですか?」

 

 

「質問を質問で返して本当に申し訳ないんだけど、一つだけ聞かせてもらうよ。犯罪者を生かして捕らえるのはなぜだと思う?」

 

「法の裁きを受けさせるため、違いますか?」

 

 

まあそうなるよなあ……。そもそもそこの認識が違うとどうしようもない。

 

「半分は当たりだけど、半分は外れ。警察の仕事は犯罪者を捕らえることであって裁くことじゃない。それはどういうことかというと、殺しちゃったら警察の仕事に犯罪者を殺す、つまり裁くことまで入ってしまう。」

 

それをやってしまうと法の存在価値がなくなってしまう。犯罪者は殺せ、それでは法治国家として成り立たない。

 

「それは……。拡大解釈ではないのですか?」

 

「殺すんじゃなく捕らえるっていうのが一番大切なことなんだ。今のところは起きていないけど、仮に人質取られるような事件が起きたら一番重要なのは何より人質の救出になるけども。」

 

 

「それはもちろん重要なことだと思いますが……。仮にこちら側に殉職者が出たらどうなさるおつもりなのですか?」

 

「出ないことを祈るしかないけど、仮に出たらそのときは犯罪者をあの程遠志と同じ処刑法にするとかして警察の皆を納得させるしかない。」

 

 

殉職者が出るリスクと治安維持を円滑に進められなくなるリスク、どちらを取るかと言われれば絶対に後者を取らざるを得ない。

 

 

「そんな……。どうしてなのですか!?」

 

「一言で言ってしまえば『殴る』ということと『殴ってもいい』は全然違うということ。領土内の民衆に武器を持てる人は誰もいない。警察だけが持てる。それが『当たり前のこと』に今はなっている。でも強権的に、ただ権力を威圧的に使ってしまうと民衆にとって警察は恐怖の対象になるし、最終的には『なんで我々は武器を持てないんだ』となってしまう。そうなった瞬間に俺たちの領土内の治安維持は失敗する。民衆の支持なくして治安の維持は絶対にできないから。

 

俺らのこのやり方、たぶんほかの国も真似しようとしてるところはあると思うよ。でも肝はそこ、つまり権力をいかに抑制的に使うか、どう忍耐、耐えていくかだから、それを理解できないままやっても絶対に上手くはいかない。だって普通考えないでしょ?

 

武器を持てる、殴れる側が殴ってもいいのにとにかく忍耐を必要と、とにかく我慢していく、なんてね。権力なんて使える側が使って何が悪いんだ、そう思ってる為政者だらけだから。でもその考えをもってる限り、俺らのやり方の治安維持はできない。

 

それができないということは、つまり力を力で抑えるしかないわけだ。それがどうなるか、は考えればわかるよね?」

 

 

「長期的には絶対にうまくいきませんね。つまるところ、同情なのですね……。民衆の同情が警察に向かなければいけない、犯罪者に同情してしまうような治安維持の方策をとってはいけない。」

 

 

たとえば、貧乏人が泥棒をして逃げようとしました。警察が来たので木刀で対抗しました、警察は剣で斬り殺しました。あるいは、包丁を持って誰かを脅して立てこもりました。対処として射殺しました。

 

こんなことばかりやっていては“警察”を怒らせたら殺されちまう、と民衆が思ってしまう可能性がある。町中で警察の批判だとかうかつなことを言ってはいけない、そう思わせてしまっては治安維持としては大失敗だ。必ず反乱を起こされてしまう。

 

 

「そういうことになる。警察に同情される、あるいは民衆の支持が得られない状況では治安維持がそもそもできない。

 

あとは、査察、についてだったかな?」

 

 

「なぜすべて椿さんの指示がないと動けないのか、それがすごく謎なのです。おぼろげながら、調査できることと実際にすることは違うのだということなのだろうとは思うようになったのですが……。」

 

 

「これは正直俺らのことだけ考えるなら必要ないし、鴻鵠の好きにやっていいと思うんだよ。でも、俺らが死んだあとのこと考えると、絶対にこの手順は踏んでおかないといけない。軍なり警察なりという力、武力を持つ部門を統括している人はあくまで為政者の指示の元に動かなくてはいけない。そのことは徹底しておかないと、武力を盾に気に入らないからやらないだとか逆に自分の指示に従えとかなってしまう。すると軍人同士の争いになって破滅への道を突き進むだけになっちゃう。」

 

 

「それは先日の話とも重複しますね……。確かに、たとえば私が剣で脅して朱里さんにここはこうやれ、だとか言ってしまうと国の秩序が成り立たなくなる。

 

そもそもこんな風にいろいろ考えているのは私だけで、部下は皆楽しみながらというと言い方としては悪くなりますが、前向きに取り組んでいるのでそこの心配はいらないと思います。」

 

 

「それはすごくいいことだね。ところで折角だからちょいと聞きたいこともあるんだ。愛紗と福莱と水晶呼んでくるからちょっと待っててもらってもいい?」

 

「はあ……? わかりました。」

 

 

あえてこれまで言わなかった腹案。折角徐州をもらったのだからやってしまえばいいんじゃないかと思っているけど、皆はどんな反応を示すだろうか。

 

「さて、何でしょうか?」

 

「徐州って海に面してるよね? だから塩を生産しちゃったらどうか、と思ったんだけど、皆はどう思う? といってもまだ正式な案じゃなく雑談程度で聞いてもらえればと思うけど。」

 

 

「絶対反対です。今は。」

 

「断固反対します。水晶さんと同じく、今は、ですが。」

 

 

あちゃー、と思ってしまう。水晶、福莱がNGだということはそもそも論外だということか。理由はなんとなく想像つくけども……。

 

 

「私は塩がとれるのであれば、相当の価値を手に入れられるので一考に値すると考えますが……。今は、とはどういうことなのでしょう?」

 

「なぜ私にも意見を求めたのか、それがわかりかねます。朱里さんらに聞いたほうがよほど建設的なのではと思いますが。」

 

 

愛紗は意外にも乗ってきて、鴻鵠はそもそも論。

 

 

「鴻鵠さんにも聞いたのは仕事が増えるからですよ。今はまだ時期ではないでしょう。何のために朝廷にお礼参りをしたのか、それを無にすることを今やる必要はない。

 

最終的にはやるほうがいいと考えますよ? ただ、少なくとも今の皇帝の間はやるべきではない。」

 

「塩作りを監視して朝廷や諸侯に気づかれないようにするのも鴻鵠さんに任せることになるので聞いたわけでしょう?」

 

「ご名答。」

 

 

水晶と福莱はホント先が見えすぎて何でもわかってしまうから恐ろしい。この二人が割れるか賛同してくれるなら皆に聞く議題にかける価値はあるかと思ったけど、今はどうしようもなさそうだ。

 

 

「なるほど……。しかし、今の皇帝の間、というのが長く続くことがあったらどうするのですか?」

 

「まるで、長く続いてほしくない、ような言い方ですね。冗談です。 水晶さんに刺激されて久々に私も天文を見ましたが、おそらく3年は持たないでしょう。」

 

 

鴻鵠の問いにはそう答えた福莱。天文を見ると将来がわかるなんてすごすぎる。便利というかすごい力ではあるんだけど、頼りすぎるのは危険だろうとも思う。もちろん、水晶や福莱たちは言わずとも理解していることではあるけれども。

 

 

「実際、都の情勢はそんなものですよ。十常侍と何進、袁紹らによる権力争いは激化し、いかに自分の推している子供を皇帝にするか、それだけです。 明日、今の皇帝が暗殺されても不思議ではないくらいです。」

 

「そうなると、我々にもどちらかに味方せよ、というようなものが来てもおかしくないのでしょうか? そのときはどうするのです……?」

 

「来ていますよ?」

 

愛紗の問いにあっさりと答える水晶だった。マジかよ。

 

 

「要はお仕えして繁栄が続くことをお祈りいたします、という返信ですね。弱小なので都に参るほどのことはできませんともお伝えしていますので、問題はありません。」

 

「あくまで今の皇帝が続いて繁栄し続けることを祈る、ということですか。ものは言い様といいますか、巧妙です……。しかし、なぜこのことを議題にはあげなかったのですか?」

 

「あげる価値のあることとは到底思えませんでしたので。お礼参りをしたことについてはあげていますが、それで十分だと思っていたからです。愛紗さんだって、軍の統括もされていますが、逐一報告して議題にあげているわけではないでしょう? 取捨選択です。これがたとえば孫堅との軍事演習の話だったりすればあげますが、朝廷からどちらの味方につくか、なんて答えは決まっている話でしょう?」

 

 

「それはそうだが……。確かに、皇帝にお仕えしている、そのこと以外は考えられないという返信以外にはありませんね。ただ、仮に賄賂だなんだで問題が起こったときはもちろん報告するのですね?」

 

「それはもちろんです。経緯からすべて議題にあげます。」

 

 

危なそうだな、そう思えば先に議題にはあげてくれる、そういう信頼はある。何から何まで報告して議題として片付けていくのでは、何年かかっても終わらないだろう。それにウチの場合は武官には見えない軍のことを藍里や風をはじめとする文官が、逆に文官には見えない政治のことも星や悠煌をはじめとする武官が見ている相互協力の体制もつくってあるから、安心感は大きい。

 

 

 

後書き

 

 

リアル多忙につき更新遅れ遅れになってしまっていて本当に申し訳ない限りです……。なんとか時間を見つけて完結まで書いていきたいと思っておりますので改めてよろしくお願いいたします。

 

 

なお、誤字脱字以外にも筆者が気になった部分(何せ初稿は5年以上前なので)はザクっと改稿する場合あるかと思います。 前66話のタイトルも変更させていただいておりますが、併せてご了承くださいませ。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
6
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択